これは、おなじみディズニーシーのループコースター「レイジングスピリッツ」。ディズニーランド・パリにある「インディジョーンズ・テンプル・オブ・ペリル」（1993年オープン）が元になったコースターだというのは、コースターファン、もしくはディズニーファンならご存知だと思います。写真で比較する限りでは、コースレイアウトは同じ設計。まさにクローンと言えます。

しかし、そこはディズニー。全く同じというわけではなく、演出面やバックストーリーは大幅に変更され、火と水をテーマとした雰囲気たっぷりのコースターにアップデートされました。逆に、インディジョーンズは一時期バック走行車両を取り入れるなど、それぞれ違った工夫が施されているようです。

製作はインタミン社。遊具製作の最大手会社として、ハイクオリティなメガコースターを数多く生み出しているのは有名なところ。ところが、そんなインタミンのイメージを持って、純粋なコースターとしてこのレイジングスピリッツに乗ってみると、かなり大きな違和感を覚えます。

ライドは狭く窮屈で、無駄に仰々しいU字ハーネス付。そして、あまりにも古典的なコースレイアウト。特徴は、今時珍しくもない垂直ループ”だけ”で、あとは軽いアップダウンと、おまけ程度の水平ループのみ。まるで、数十年前のループコースターをリニューアルしたような、妙な違和感を感じていました。インディジョーンズもすでに10年以上前のコースターであるので致し方ないのですが、どうもそれ以上の理由がありそう。

一体なぜインタミンの、そして天下のディズニーの新アトラクションが、このような古めかしいコースレイアウトなんだろう。そう思って調べていると、意外なことが判りました。

実は、レイジングスピリッツやインディジョ−ンズとほぼ同じコースレイアウトを持つコースターが、他に少なくとも5箇所に存在していたのです。

それは、D.P.V. Rides社（Pinfari社）のTL59というコースター。古典的なファミリー向け小型ループコースターです。現在でもイギリスとデンマーク（チボリ公園）に一台ずつ現存しているようで、写真を見てみると全体的なコースレイアウトは本当にそっくり。

Loop　/　Hili Fun City（アラブ首長国連邦） 　（RCDBより）

インディジョーンズは、このコースターのコピーと言われています。基本的なレイアウトは同じまま、規模はほぼ倍に、構造はインタミンオリジナルにバージョンアップ。しかし、元となったPinfari社のコースターは80年代初期に設計された大変古いものなので、どうしても古典的な雰囲気が漂ってしまっているようです。逆に言えば、80年代初期、つまりループコースターが一世を風靡した当初のモデルのコピーが、現在において人気の新アトラクションになっていることに驚いてしまいます。そこは、さすがディズニーと言うべきか。

Pinfari社というのは、ヨーロッパでシェアを持つ遊具メーカー。日本にもそこそこ輸入されており、「いもりんす」など比較的小規模なファミリー向けコースターや、回転系の絶叫ライドを得意としています。

いもりんす　（Pinfariウェブサイトより）

では、インタミン社はなぜそっくりなコースレイアウトにしたのでしょう？古典的で多くの人になじみの深いコースレイアウトだから？　完成度が高い、楽しいコースだったから？　設計技術者が同じだから？　リスペクト？　はたまた、単なる手抜き？？　ここは謎な部分です。

様々なメーカーの遊具を見ていると、この例に限らず、会社は全く異なるのにほとんど同じデザインやコンセプトの遊具が多く存在するのに気付きます。例えば、「トップスピン」と「トップガン」などもそっくり。コースターにおいても、マグナムXL-200とスチールドラゴンなど、メーカーが異なるのにそっくりなコースレイアウトがちらほら・・・。

これは、問題にはならないのか。それともこの業界ならではの必然なのか。一介のコースターファンである部外者から見ると、不思議な関係にも見えますが・・・。

さらにRCDBで調べてみると、CrazyLoopというネーミングで設置されていることが多いこのモデル。なんと日本にも同名のコースターが過去に存在していました。それは、多摩テックの「クレイジーループ」。全く資料が見つからないので確認できないのですが、ひょっとしたらこれもレイジングスピリッツと同型コースターだったのでしょうか？レイジングスピリッツの祖先となるコースターが日本に存在していたというのは、ちょっと驚きです。さてさて、真相はいかに・・・。