横浜・八景島シーパラダイスは人工島を丸々使って作られた遊園地プラス水族館。運営は西武グループである株式会社八景島。ということで、としまえんや西武園とも関係が深いようだ。
アトラクションの数も少なく、どうしても水族館メインで語られることの多い八景島だが、国内トップレベルを誇る二大絶叫マシンが設置されている。それが、国内最大のフリーフォール「ブルーフォール」と、このサーフコースターだ。サーフコースターは、水族館とは反対側の端に位置する。八景島に向かうモノレールからも、その巨体が目に入る。
乗り場の雰囲気はフジヤマに似ており、つづら折の階段を登っていくとその上にプラットフォームがある。完成からそれなりに年数の経っているアトラクションだが、プラットフォームやライドはとてもきれいだ。これは、サーフコースターに限らず八景島の他のアトラクションにも言える。
ライドはバンデットとほぼ同じ構造(デザインは大幅に違うが)。頭の上からU字型のハーネスを下ろし、がっちり固定される。ヘッドレストも大きく高いため、後部座席だと前方の視界はあまり良くない。これは残念なところだ。また、このコースター荷物置き場が無い。全て車内持込となる。軽いものは飛ばされることは無いよう、ロッカーに預けてきた方が無難だ。
巻き上げが始まるとき、「ウィーン!」とチェーンが動き出す音がする。これもバンデットと同じだ。同じメーカーの兄弟機、とでも言えるかもしれない。そのままライドは海に向かって坂を上っていく。対岸には港と工場群が見える。海上を登っていくコースターというのは、世界でも他に聞いたことが無い。
頂上でライドはゆっくり180度旋回する。360度の海上パノラマを楽しもう。そしてファーストドロップに突入!
ドロップはさほど大きくなく、すぐにキャメルバックへ突入する。とはいえ、後部座席ではなかなかの引き込まれ感を感じるし、スピード感はなかなかだ。さらにキャメルバックの頂上では、前方の席だとふわ〜〜っとした浮遊感を感じる。海上と言うことで、普通のコースターには無い心地いい開放感を感じることができる。ここでしか味わえないキモチよさだ!
ライドは陸地の上空へ戻ってくる。そして、サーフコースター名物、連続水平ループへ!陸地の緑を眺めながら、下りの水平ループを3回転弱ほど回る。ぐぐぐっとGがかかり、歓声が上がる。これだけ長く回転するコースターはなかなかない。Gがかかる時間が長いので、バンザイしていると指先の血が抜けてしびれてくるのが判る。なかなかの迫力!
その後、ライドは直線のアップダウンコースを海上に向かって走る。直線と言っても二度のアップダウンに加えて微妙なカーブを織り交ぜており、意外な動きと浮遊感にまた歓声があがる。この微妙な動きによる意外性は、トーゴのコースター特有のものだ。ある意味、木製コースターに通じるファジーさがあるように感じる。
木製コースターでは、ムービーや写真、ましてや文章では決して伝えることのできない微妙な振動、予想できない動きという特徴がある。全く同じコースで設計しても、乗り心地は全く異なったものになるのだ。トーゴのスチール製コースターにも微妙な挙動がちりばめられていて、とにかく豪快・スムーズな最新型海外製コースターでは味わえない、独特の味わい深い楽しさがある、と思う。
二つ目のドロップのあと、今度は海上の水平ループへ。高度がぐっと下がった後の水平ループ突入のため、スピードも、かかるGも一回目のループ以上だ。腕が突然重たくなり、バンザイを続けることができない。体を押さえつける強烈な力に思わず叫んでしまう。この水平ループは上向きで約二回転。ちょうどバンデットの水平ループと同じような感覚だ。
水平ループを抜けると地面近くまでドロップし、続けて軽いアップダウンと左右への振りがある。それまでかかっていた強烈なGから開放され、今度はドロップで浮遊感を感じる。このメリハリの利いたコースレイアウトが、サーフコースターの隠れた魅力だ。
小休止はすぐに終わり、三回目の水平ループへ。1回転半ほど回る。これほど水平ループだらけ、というコースターも珍しい。そしてGから開放された後は、軽くドロップしてからキャメルバック。何度も何度も繰り返されるこの連続技は、たまらなく楽しい。
キャメルバックを越え、海に向かってドロップ。そして急カーブ。ループを半回転ほど回る感じだ。最後の最後で、また強烈なプラスG。これでもかこれでもか、という連続攻撃が続く。(今回乗車したときは、ウォーターサーフコースターというイベントをやっており、この場所で水をかけられた。といっても霧程度の水で、スプラッシュバンデットのように豪快にかけられるものではなかったのが残念。)
カーブから開放された後またドロップ。最後まで飽きさせない。そしてブレーキがかかってゴール。
最後の最後までしっかり「あん」のつまった優れたコースター。今は亡きトーゴの巨大コースター3大傑作(勝手に命名)のうちのひとつだ。
とにかく最後まで続く水平ループとキャメルバックの連続が大変気持ちいい。スピードや高さといった数値は決して特筆すべきモノではないが、そんな事は忘れてしまうほど中身が濃く、楽しい。
乗り心地も、作られた年代を考えれば及第点。決して最新型の海外製コースターのようなスムーズな乗り心地では無いが、逆にそれが味となり、飽きることないライドを楽しめる。欲を言えば、U字ハーネスではなく、フジヤマのような開放感のあるライドを導入してもらいたかった。
ただ、水平ループによるGが強烈なため、血圧の低い人は要注意。貧血状態になって動けなくなってしまう人もいるようだ。見た目よりもハードなコースターでおまけに大変長いため、コースターに慣れていない人は覚悟して乗ろう。
ちなみに自分も最初に乗ったときは気分が悪くなってしまい、もう乗りたくないと思ったものだ。先日、久しぶりに乗ってみたら、こんなに楽しいコースターだったのか、とビックリさせられた。微妙な挙動や水平ループによるプラスGを楽しめるようになるには、それなりの経験を積む必要があったようだ。そういう意味では、実はなかなか玄人向けのコースターと言えるかもしれない。 |
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