4次元空間への入り口
カラカラカラと鳴る巻上げのチェーン。それが途切れ、頂上に到着したことを知らせる。座席がぐぐぐっと上を向き、視界に入るのは空ばかりになった。
カリフォルニアでは突き抜けるような青だったが、ここは日本。梅雨時期のどんよりとした空に手が届きそうなほどだ。いや、空だけを見ているなら、地上でも高さ76メートルでも同じか?そんなことを考え、今から始まる冒険から気を紛らわす。
ライドが少し下り、瞬間、背中にかかる重力が軽くなる。普通のコースターなら、ここで一気にドロップ・・・というところだ。しかし、ええじゃないかは違う。軽く下って少しだけ加速した後、また上昇した。全身をふわっとした浮遊感が襲う。
次の瞬間、上を向いていた座席が前方に急回転。空の代わりに、突然76メートル下の地面が視界いっぱいに広がった。
・・・高い!
巻き上げの突端で、突然真下を向いてぶら下げられる。しかも、それまで空を眺めていたはずが、一瞬でひっくり返るという未知の感覚。そして、自分が76メートルの高さにいることを思い知らされる。体は宙に浮き、いきなり生身で空に放り出されたようだ。
「落ちる!」と思った瞬間、65メートルの落差を、真正面を向いたまま地面に向かって一気に落下!
「うおおおおっ!!」
これはまさにダイビングだ。正面から体ひとつで落ちていく。大の字になって、全てから開放され、地上に向かって突進していく。全身にあたる風圧。巨大な機械を背負っていることすら、頭から消え去ってしまう。
基本的に手足がブラブラで、視界の開けたライド構造のため、開放感が素晴らしい。最前席では身一つで落下するような視覚効果が得られるし、後部座席では、逆に巨大なライドに前方の視界が微妙にふさがれたことで先が読めない展開を味わえる上に、圧力にも似た重い引き込まれ感を感じる。キワモノコースターとして作られたええじゃないかだが、そのドロップの迫力は間違いなく超一級だ。
特に後部座席の迫力は特筆モノだ。これまでのどんなコースターとも違う未知のドロップを味わえる。すさまじい迫力。
これだ!この感覚。
エックスに初めて乗車したときの圧倒的なスリルと興奮。それは、このファーストドロップに集約されていた。とにかくすごい。すごいとしか言いようの無い、このパワー。これが、アメリカが生み出した究極のコースターのひとつなのだ。あらゆるコースター体験を文字通りひっくり返すこのコースター。そして、それがついに日本に生れ落ちたのだ。
しかし、実際はそんなことを考えている暇は微塵も存在しない。ダイビング気分を味わえるのは、ほんの一瞬に過ぎない。
ほぼ90度で落下するライドが猛スピードを獲得した瞬間、座席は突然反転。地面の変わりに空が視界に広がる。空を眺めながら逆さまに落下。
ライドは最高速度126km/hに達し、背中に強烈なGがかかる。強烈なスピード感。目の前のファーストドロップからぐんぐん離れていく。
振動がすごい。ライドにしっかりしがみついているのが精一杯だ。目の前には、今落ちてきたファーストドロップのそそりたつ赤いレールが空に向かって直立している。
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