発射
前方はトンネルになっており、中は薄暗い。メカニカルな雰囲気の中、赤いスポットライトに照らされる。まるでアニメに出てくる秘密基地のよう。
かなり先の方でトンネルが途切れ、外の明かりが見える。これからあそこに向かって加速するのだ。
周囲には空気を圧縮するコンプレッサーの甲高い音が響き、かなり異様な雰囲気。緊張がどんどん増していく。
トンネルの途中でライドは停止。上部にはモニタがあり、頭をヘッドレストに付けるよう表示されている。
以前乗車したときは、渦巻き状のイルミネーションがトンネルの出口に向かって光っていたが、なくなったようだ。ドキドキしながら発射を待っていると、機動戦士ガンダムの主人公「アムロ・レイ」のセリフが流れる。「冬の絶叫祭り」というイベントのため、いつもと演出が違う。
そして、カウントダウン。「3、2、1、アムロ、いきまーーす!」
これから起きることを想像し、息を止めてぐっと身構える。鼓動が早くなる。何度乗ってもこの緊張感は薄れない。しかし、なかなか出発しない。はるか先に見える外の明かりを注視し、ぐっと手を握り締める。長い。まだか。まだか。
と、次の瞬間前方にある小さなシグナルが点灯した。「ドドンパぁ!!」
一瞬でシートにめり込む体。暴力的なまでの力が全身に加わる。
「ぐおおおおおおっ!!」重力に耐えるため、全力で叫び声を搾り出す。周囲の視界がぐにゃりとゆがむ。はるか先に見えていた出口が、遠近感を無視してぐぐぐぐっと目の前に迫る。一瞬のことに、まるで空間が圧縮されてしまったように感じる。
なんという加速感だ。高速で走っている新幹線や、飛行機から外の風景を見ると、遠近感が麻痺してミニチュアのように感じることがある。ドドンパでは、たった1.8秒でその世界へ飛ばされてしまうのだ。まさに常識を超えた加速力。
猛スピードで、トンネルから外へ飛び出す。目が慣れていないため、周囲の景色は一瞬ホワイトアウトしてしまう。
顔に当たる風がもの凄い。ほおが後ろに引っ張られている。視界が戻ってくると、周囲の景色が信じられないほどのスピードで流れていくのが判る。すさまじいスピード感。普通に生活している中では、決して経験できないスピードだ。
もう後ろに引っ張られる重力は感じない。加速が行われるのはトンネルの出口まで。そこから先は勢いだけの世界だ。
しばし直進した後、ライドは緩やかな下り坂に入る。ゼロGフォールと呼ばれる部分だ。超高速で進んでいるため、緩やかな傾斜ながら、ふわっとした浮遊感を感じることができる。
そして、トンネルへ突入。一瞬で外へ飛び出す。
トンネルを抜けると、高速カーブだ。急角度のバンクを持った、大半径のゆるやかカーブをおおらかに曲がっていく。右手には園内がよく見渡せる。左手には空。とても気持ちがいい部分だ。強烈な加速で恐怖してしまった人も、ここでは爽快感を目いっぱい感じることができるだろう。思い切りバンザイして、このスピード感を楽しもう。 |