地上128メートル
ふと気が付くとスピードは低下、よっこらしょ、という感じでタワー頂上へ到着する。止まってしまいそうなスピードだ。まさか、このまま後ろに落ちてていくのでは!?不安になるが、なんとか天辺にたどり着いたようだ。
なんという眺めだ!!周りには何も並ぶものが無い。地平線が霞んでいる。あのミレニアムフォースまでが下の方に見える。そして、なんという開放感。360度、あるのは空だけだ。それまでの凄まじい振動、音、風圧から一気に開放され、あたりは静寂に包まれる。風が冷たい。同乗者達が上げる歓喜の叫び声だけが、不思議と遠くから聞こえる。
興奮は最高潮に達している。心臓が破裂しそうだ。自分だって同乗のアメリカ人達に負けず、全力で叫び続けている。一瞬も途切れることなく、叫ばずにはいられない。だって、世界一のコースターを体験しているのだから!
実際に頂上で感慨にふける事ができるのは、1秒ほどしかない。頂上を過ぎると、ライドは一気に落下を始める。スピードによる興奮の叫び、頂上の開放感による感動の叫び。最後に来るのは、128メートルを正面から垂直落下する「恐怖の叫び」だ。
ライドはおもむろに狙いを地上に向ける。それまで目の前に広がっていた地平線に代わり、今度は128メートル先の地面が視界いっぱいに広がる。叫ばずにはいられない。そのまま一気に落下!
ふと気が付くと、目の前には赤いレールがとぐろを巻いている。あそこに突っ込んでいくのか?頭が当たったりしないのかな?と自由落下しながら一瞬で考える。
ライドはひねられたレールへまっさかさまになって突っ込んでいく。横に強い力を感じ、目の前の地面が270度回転する。バンザイすると、柱に手が当たってしまいそうだ。
地面が近づきスピードが戻ってくる。まぶたがはためき、振動とGがライドを襲う。曲線部分を経て、レールは地上と水平になる。相変わらず、圧倒的なスピード感だ。
そのまま、最後の直線コースを走りぬける。途中、ゴールのゲートをくぐり、圧倒的な運動エネルギーを残したままブレーキ。全く振動も衝撃も無く、徐行レベルまでスムーズに減速。
笑いが止まらない。なんなんだ、これは。あまりの興奮に、頭がおかしくなってしまったようだ。同乗者も、みな手を叩いて叫び合っている。こんなコースターが、存在する事自体が驚きだ。下の方では、乗車を待つ人たちがこちらを眺めている。変な東洋人がおかしくなってるよ、とでも思われたのだろうか。でも、そんなことは気にしていられない。とにかく今は、この興奮を鎮めるだけで精一杯なのだから。
ライドはそのままゆっくり進み、プラットフォームの裏手へ戻ってくる。そこで降車する。足がガクガクしているため、降りるのも一苦労だ。 |